実車評価の現場からvol.2――九十九里ホーム病院

 当教室では、医療機関と連携しながら、路上で実車評価を行っています。今回は、「九十九里ホーム病院」様のご協力のもと、実車評価の様子を撮影させていただきました。
(なお、個人情報への配慮から、患者様役は病院スタッフ様にお願いしております。)

 千葉県匝瑳市にある九十九里ホーム病院は、地域の皆さまに寄り添う医療を提供する、信頼と安心の病院です。最寄りの「飯倉駅」からほど近く、アクセスの良い立地にありながら小高い丘の上に位置し、周囲には田園風景が広がる静かな環境の中で、心穏やかに過ごせる空間が整っています。病院には、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病床を備えており、地域で暮らす皆さまの生活背景やご希望に寄り添った温もりある丁寧なケアを実施しています。医療・介護・福祉が連携した体制も整っており、退院後の生活まで見据えたサポートが可能です。


 病床数は、一般病床66床、地域包括ケア病床22床、療養病床54床、回復期リハビリテーション病床29床を有し、患者様の状態やニーズに応じた柔軟な対応が可能です。病室は、個室・2人部屋・4人部屋があり、プライバシーや快適性にも配慮されています。面会時間は火・木・土・日曜日の14:00~15:00となっており、ご家族とのふれあいの時間も大切にしています。

 理事長・井上峰夫氏は、「目の前に困っている人がいる。だから私たちはやって来ました」と語ります。その言葉の通り、九十九里ホーム病院では、医療の枠を超えて人を支える姿勢を大切にし、地域の暮らしに寄り添う医療を実践しています。丘の上から見渡す匝瑳の風景は、患者さんにとっても、スタッフにとっても、心を穏やかにする療養環境。これからも、安心と信頼の医療を届けてまいります。 ※ 理事長の言葉は、福祉新聞の記事(掲載日:2015年4月16日)より引用させていただきました。

 運転再開をご希望される患者様には、まず机上検査を実施いたします。検査には以下の認知・注意機能に関する課題を含みます:

  • MMSE(簡易認知機能検査)
  • Kohs Block Design Test(コース立方体組み合わせテスト)
  • SDSA(運転技能評価)
  • CAT-R(標準注意検査法 改訂版)
  • TMT-J(Trail Making Test 日本版)
  • BIT(行動性無視検査)
  • 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

これらの検査結果が院内で定めた判断基準を満たした場合、次のステップである実車評価へと進みます。

 九十九里ホーム病院では、地域支援の一環として、以下の形態にて実車評価を実施しております。また、他院に通院中の方でも、診断書をご提出いただければ、実車評価を受けていただくことが可能です。

1.  入院患者様を対象とした実車評価
 入院中の患者様を対象に、退院後の運転再開の可否および安全性を確認するための評価を実施いたします。(作業療法士が後部座席に同乗いたします)

2. 外来患者様の自宅実車評価
 外来通院中の患者様については、病院からの実車評価に加え、ご自宅からの実車評価も可能です。(作業療法士は同乗いたしません)

3. 認知機能に課題がある方への実車評価
 指定自動車教習所で実施される高齢者講習において、認知機能に課題が認められた方を対象に実車評価を行っております。

今回は、「入院患者様を対象とした実車評価」の様子をご紹介いたします。

 .実車評価 開始前

 指導員は3階受付に直接お伺いいたします。また、受付には「ひよこ運転教室」のパンフレットを設置しておりますので、ご自由にお持ちください。

イ.作業療法士との打ち合わせ

実車評価担当の作業療法士が、患者様情報提供書をもとに患者様のご様子や検査結果などを説明いたします。

 ウ.患者様へのご挨拶ならびに手続きのご案内

 ごあいさつの後、同意書へのご署名と、受講料(税込7,700円)を現金にてお支払いいただきます。(交通費および、万が一の当日キャンセル料は無料ですので、どうぞご安心ください)

 エ.道路交通法の確認

 標識の意味や安全確認の方法について確認していただきます。また、オリジナルの運転教本で、道路交通法を解説いたします。

 オ.実車評価(乗降・車庫入れ)

 実車評価では、まず安全に乗降ができるかどうかを確認いたします。続いて、エンジン始動までの一連の操作(座席の調整、ミラー確認、シートベルト着用など)がスムーズに行えるかを確認します。その後、左バック・右バックによる車庫入れを行い、車両感覚・注意配分・ハンドル操作・周囲の安全確認などを総合的に評価いたします。
ドライブレコーダーで運転中の様子を録画します。

 カ.実車評価(路上評価)

 路上評価では、運転操作や安全確認に加え、注意力・疲労の兆候、そして運転中の感情の安定性も観察します。走行コースは約12kmで、所要時間は車庫入れを含めておよそ45分です。コース途中の安全な場所で路上停車を行い、病院の駐車場に戻って降車するまでの一連の動作を含めて評価します。

 キ.評価結果後の打ち合わせ

 院内に戻りましたら、患者様にはST室(言語聴覚療法室)で待機していただきます。その後、スタッフと作業療法士は別室にて打ち合わせを行い、双方の感想を共有しながら、患者様への説明内容や動画で振り返る場面などを確認します。

 ク.フィードバック

 実車評価の終了後、患者様には運転の良かった点や改善点について振り返っていただきます。その後、必要に応じて動画を確認しながら、スタッフが運転時の注意点や今後の課題についてご説明いたします。最後に、作業療法士が患者様へ感想と今後の流れをお伝えし、実車評価は終了となります。

 以上のように、九十九里ホーム病院では、患者様一人ひとりの生活環境に応じた実車評価を実施しております。運転再開に向けた不安に寄り添いながら評価を行うことで、安心して日常生活へ戻っていただけるよう支援しています。掲載の写真を通じて、実車評価の具体的な流れや当日の雰囲気をご確認いただき、少しでも安心材料となれば幸いです。

 このたびの実車評価に際し、写真撮影にご理解とご協力を賜りました「九十九里ホーム病院」関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。お忙しい中にもかかわらず快くご承諾いただき、撮影当日は終始ご配慮をいただいたおかげで、円滑かつ安全に進行することができました。皆様の温かいご対応に深く感謝申し上げます。

 病院の詳細につきましては、下記の「九十九里ホーム病院」ロゴをクリックしていただくと、公式webサイトをご覧いただけます。なお、実車評価は、現在ご入院中の方や過去にご入院された方に限らず、他院へ通院中の方でも、診断書をご提出いただくことでご利用いただけます。また、指定自動車教習所で実施される高齢者講習において、認知機能に課題が認められた方につきましても、まずは下記の「九十九里ホーム病院 公式webサイト内のお問い合わせ」ページをご覧いただき、お気軽にご相談ください。