実車評価の現場からvol.1――八千代リハビリテーション病院

当教室では、医療機関と連携しながら、路上で実車評価を行っています。今回は、「八千代リハビリテーション病院」様のご協力のもと、実車評価の様子を撮影させていただきました。(なお、個人情報への配慮から、患者様役は病院スタッフ様にお願いしております。)

八千代市米本にある「八千代リハビリテーション病院」は、緑に囲まれた静かな住宅地の中にあります。落ち着いた環境の中で、リハビリに取り組む方々が安心して過ごせるよう配慮された病院です。巨樹の会の基本理念は、「手には技術 頭には知識 患者さまには愛を」。この理念のもと、患者様一人ひとりに寄り添った医療とリハビリテーションを提供しています。病床数は240床で、個室・2人室・4人室がバランスよく配置されています。面会時間は毎日、9:00〜11:00/13:00〜17:00の間で30分以内となっており、ご家族との時間も大切にできる体制が整っています。

最寄り駅は、京成線・東葉高速線の「勝田台駅」。駅からは東洋バス「米本団地行き」に乗って約15分、「八千代リハビリテーション病院」バス停で下車すると、徒歩3分ほどで到着します。路線バスの本数も多く、アクセスしやすい立地です。また、病院見学をご希望のご家族や、入院患者様のご家族を対象とした送迎バスも運行されています。
「勝田台駅北口」と「千葉ニュータウン中央駅南口」から発着しており、平日(月〜金)のみご利用いただけます。詳細は、病院公式サイトの交通案内ページをご覧ください。

 八千代リハビリテーション病院では、長年にわたり指定自動車教習所と連携を続けてきました。さらに昨年、新たに開業した当教室との協力体制も整え、教習所まで通うことが難しい患者様や、病院周辺での実車評価を希望される方への運転支援にも力を入れています。千葉県内でも、指定・指定外の自動車教習所と連携しながら実車評価を行っている病院は数えるほどしかありません。その中で、八千代リハビリテーション病院では、「患者様一人ひとりの状況に応じたきめ細やかな運転支援を実践すること」を、スタッフ全員が大切にしています。そして当教室では、「できるかどうか」ではなく、「どうすればその方が再びハンドルを握れるか」。その問いに寄り添いながら、これからも地域に根ざした運転再開支援を続けてまいります。

運転再開をご希望される患者様には、まず机上検査を実施いたします。検査には以下の認知・注意機能に関する課題を含みます:

  • MMSE(簡易認知機能検査)
  • Kohs Block Design Test(コース立方体組み合わせテスト)
  • SDSA(運転技能評価)
  • CAT-R(標準注意検査法 改訂版)
  • TMT-J(Trail Making Test 日本版)
  • BIT(行動性無視検査)
  • Rey-Osterrieth 複雑図形検査(視空間構成・記憶評価)

これらの検査結果が院内で定めた判断基準を満たした場合、次のステップであるドライブシミュレーターへと進みます。

机上検査を終えた方には、次のステップとして、ドライブシミュレーターを用いた運転評価を実施します。
本田技研工業株式会社製のリハビリテーション用ドライビングシミュレーター「DB型Model A」を導入しています。実車に近い運転環境の中で、注意力・判断力・反応速度・危険場面への対応力などを評価します。また、八千代リハビリテーション病院では、運転班の代表者が教習指導員から道路交通法の指導を受け、その知識を担当スタッフに共有しているため、このシミュレーター評価の段階で、指定自動車教習所で実施する進路変更時の安全確認方法を練習することができます。安全な室内環境で実施できるため、運転に不安のある方でも安心して練習に取り組んでいただけます。評価結果をもとに、実車評価の実施可否を慎重に検討いたします。

八千代リハビリテーション病院で行う実車評価は、「千葉市にある指定自動車教習所」または「ひよこ運転教室」のいずれかで実施しています。
この実車評価は、運転再開を目指す患者様を支援する取り組みの一環です。どちらの施設も、患者様の運転再開を応援する立場で評価を行っており、それぞれに特長があります。
実車評価を実施する施設は、患者様の状態や事前評価の結果を踏まえて、病院が適切に判断いたします。

「ひよこ運転教室」では、病院の駐車場から実車評価を開始できるため、教習所までの移動が不要です。また、指定自動車教習所のように複数回の受講が前提ではなく、「原則1回・60分で完了」する点も大きな特長です。さらに、「入所料金・交通費・当日キャンセル料」がすべて無料のため、患者様や病院関係者様の時間的・経済的なご負担を軽減できます。担当する指導員は、指定自動車教習所に25年間在籍し、某病院の勉強会では実車評価の講師も務めておりました。また、全国でも取得者が少ない「障がい者教習指導員資格」を有しており、豊富な経験と専門知識を活かして、安心して実車評価を受けていただける体制を整えております。なお、主治医の判断により、2回目の実車評価を実施する場合もございます。あらかじめご了承ください。

 ア、ご案内の流れ

 指導員は、あらかじめロビーにてお待ちしております。最初に担当の作業療法士が、情報提供書をもとに患者様のご様子や検査結果などを説明いたします。
 お時間になりましたら、作業療法士が患者様の病室までご案内に伺います。

 イ、同意書のご署名とお支払い

 同意書へのご署名と、受講料(税込7,700円)を現金にてお支払いいただきます。

 ウ、道路交通法の確認

 標識の意味や安全確認の方法など、オリジナルの運転教本を用いて道路交通法の基本を確認していただきます。

 エ、教習車までの移動と死角の説明

 作業療法士が患者様に付き添い、教習車までご案内いたします。運転席にお座りいただいた後、運転教本でご説明したドアミラーの死角を、実際にご確認いただきます。

 オ、実車評価(車庫入れ)

 教習車に乗車後は、エンジン始動までの一連の操作がスムーズに行えるかを確認後、左バックと右バックの車庫入れを行っていただきます。また、車両感覚に不安のある方には、前方の白線に車両の先端を合わせる練習を路上に出る前に実施いたします。 ※ドライブレコーダーで運転中の様子を録画します。

 カ、実車評価(路上評価)

 路上評価では、運転操作や安全確認に加え、注意力や疲労の兆候も観察します。走行コースは約10kmで、所要時間は車庫入れを含めておよそ40分です。途中2回、安全な場所で路上停車を行い、病院の駐車場に戻って降車するまでの一連の動作を含めて評価します。また、注意力や集中力に波がある方に対しては、ラジオを流しながら実車評価を行うことで、より自然な環境下での認知機能や情動反応を観察しています。さらに、記憶力や遂行機能に低下がみられる方には、カーナビを使用して目的地まで運転していただく実車評価を行うことで、注意分割や空間認知、判断力などの実生活に即した能力を評価しています。

 加えて、下記の写真にあるような駐車場の発券機を活用した評価では、右側の車両感覚の把握や、手を伸ばした際の痛み・痺れなどの身体的反応を確認することができます。この発券機を用いた実車評価は、全国でも類を見ないほど実践的かつ細やかな工夫が凝らされており、八千代リハビリテーション病院ならではの高い専門性と患者様への配慮が際立つ取り組みです。

 キ、評価結果後の打ち合わせ

 院内に戻りましたら、患者様にはST室(言語聴覚療法室)で待機していただきます。
 その後、指導員と作業療法士は別室にて打ち合わせを行い、双方の感想を共有しながら、患者様への説明内容や動画で振り返る場面などを確認します。

 ク、フィードバック

 実車評価の終了後、患者様には運転の良かった点や改善点について振り返っていただきます。その後、必要に応じて動画を確認しながら、指導員が運転時の注意点や今後の課題についてご説明いたします。最後に、作業療法士が患者様へ感想と今後の流れをお伝えし、実車評価は終了となります。

 以上で、実車評価のご案内は終了となります。なお、指定自動車教習所での実車評価は50分間と限られた時間内で行われるため、いくつかの制約があります。たとえば、教習開始前に道路交通法の説明を行うことや、録画映像を用いた指導員によるフィードバックは実施されません。

 一方、当教室では、実車評価の開始前に約10分間の時間を設け、道路交通法の説明に加え、運転時に指導員が評価するポイントをお伝えしたうえで実施いたします。あらかじめ評価ポイントを理解した状態で運転に臨めることで、安心して取り組んでいただけます。指定自動車教習所にも多くの利点がありますが、病院から施設の指定がなく、どちらで実車評価を受けるか迷われている方は、日常運転を基準にした評価体制と移動の負担が少ない「ひよこ運転教室」をぜひご検討ください。

このたびの実車評価に際し、写真撮影にご理解とご協力を賜りました「八千代リハビリテーション病院」の関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。快くご承諾いただき、円滑な撮影を行うことができましたこと、深く感謝申し上げます。

病院の詳細につきましては、下記の「一般社団法人 巨樹の会 八千代リハビリテーション病院」のロゴをクリックしていただくと、公式ホームページをご覧いただけます。
なお、八千代リハビリテーション病院様では、現在入院中の患者様、または過去に入院されていた患者様を対象に、実車評価を実施しておりますので、あらかじめご了承ください。